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デンカがセメント販売事業を太平洋セメントに承継

デンカはセメント販売事業を、吸収分割により新たに設立する完全子会社に承継させた上で、新会社の全株式を太平洋セメントに譲渡する。

デンカは1954年よりセメント事業に参入し、新潟県糸魚川市の青海工場にて、隣接する黒姫山の豊富な石灰石資源のうち、カーバイド向けに使用できない純度やサイズの石を有効活用し、セメントの製造・販売を行ってきた。また、カーバイドやクロロプレンゴム等の工場内他製品の製造時に発生する副産物を、セメント原料に有効活用することで、独自のカーバイドチェーンを構築し、製品の競争力向上や工場のゼロエミッションを追求するとともに、社外の廃棄物受け入れによる地域社会の資源リサイクルにも貢献してきた。

しかし、近年ではセメント事業は、主要販売先の北信越地区をはじめ国内セメント需要が低調に推移しているとともに、老朽化した設備の更新やカーボンニュートラルに向けた大型投資が不可避という厳しい局面に立たされており、経営計画「Denka Value-Up」において事業再構築が必要なコモディティー事業と位置付け、構造改革を検討してきたが、この度、単独運営による今後の事業維持・成長は困難との結論に至った。

太平洋セメントの100%子会社である明星セメントは、デンカの青海工場と同じく糸魚川市にセメント工場を有しており、明星セメントとの協業により、デンカの石灰石採掘及びセメント製造事業撤退後、デンカのカーバイドチェーンにおける石灰石供給と副産物の有効活用は太平洋セメント及び明星セメントが担っていく。

加えて、デンカは、従前から太平洋セメント及び明星セメントと黒姫山の石灰石鉱山の共同開発計画に取り組んでおり、その検討過程において双方の信頼関係が醸成されてきたという経緯もあり、本取引に合意をした。

デンカは、経営計画「Denka Value-Up」におけるポートフォリオ変革の一環として、重点分野の「環境・エネルギー」「ヘルスケア」「高付加価値インフラ」へ経営資源を積極投入してきた。更に今後は、2023年度~2030年度の次期経営計画を見据え、M&Aや設備能力増強投資、ならびに社会課題の解決を目的とした新規事業の早期創出等による成長戦略を推進し、企業の持続的な成長を目指していく。